根津美術館に展示の掛け軸の表装の色彩美に感銘を受け、デザインした帯揚げです。

茶室に欠かせない軸。
表装とは、その掛け軸のいわば絵にとっての額縁のような存在です。

表装に使われる色彩は書や絵などの主材に彩と物語を添え、茶花や道具組を引き立てる隠れた名脇役。その立ち位置は、和装においての帯揚げと非常に近いものです。
茶室に於いて品格を損なわないその色彩美は意外と「色の濃度」や「大胆さ」も併せ持つものでした。

撮影不可の美術館の展示室で、色を目に焼き付け、その色を思い出せる暗号のようなメモをその場で必死にとりました。

この「表装の美」を帯揚げにするにあたり、ぴったりな加工はろうけつ染めだと、すぐにイメージがわきました。
表装に多く用いられる、二重蔓牡丹唐草文様の紋綸子の生地にろうけつ染めで、三段表装の掛け軸を縦に割ったようなユニークな場の取り方で、染めました。

ろうけつ染めは、ロウで堰を作り防染する技法。
ロウ独特の、色のキワがじんわりと濃くなる味わい深い染め上がりは、「表装の美」にぴったりです。

合わせていただける着物は、織のきものから付下げくらいまで。
デザインソースが掛け軸ですから、茶会の着物まで対応できます。
やや大胆な配色ながら、二重蔓牡丹唐草の紋綸子が一定の品格を保ってくれますので、幅広い格の着物コーディネートに取り入れていただけます。 オリジナルTOP